顎関節症の治療
筋肉の収縮を抑制し、弛緩させる働きがあるとされる「ボトックス」。そもそも顎関節症とはどのような病気なのかも含め、そのメカニズムを見ていきましょう。
ボトックス注射で「顎関節症」の改善も?
ボトックス注射は美容目的での使用が広く知られていますが、実は、元々は医療用の成分ということもあり「顎関節症」の治療にも効果があると言われています。
そもそも顎関節症ってどんな病気?
「顎関節症」と言われると、字面からすれば顎の関節が悪い……噛み合わせが悪い?などと思ってしまいがちですが、実はこれは顎の関節周辺における異常の総称です。
♦主な顎関節症
- 顎の痛み
- 咀嚼する時の異音(カチカチ、ジャリジャリなど)
- 開口障害(口を思いきり開けられない)
- 噛み合わせの異常(咀嚼する時の違和感、不快感など)
- 閉口障害(口を完全に閉じることができない)
頭痛や肩こり、めまいや難聴などを引き起こすことも!
顎関節症かな?と思っても、特に痛みを伴わない場合は別に放っておいてもいいか……と軽く考えてしまいがち。しかし、顎関節症を放置すると、顎以外にも様々な支障を来たすことが多いのです。
♦噛めないだけじゃない!顎関節症の弊害とは
顎関節症を患った際、併せて現れやすい症状は主に肩こりや首こり、腰痛など筋肉がこわばったような感じの痛みや、耳鳴りや耳の痛み、難聴など耳の異常、眼精疲労や充血など目の異常、歯の痛みや味覚障害など口内の異常……といったもの。他にも三半規管を通じてめまいが起こったり、最悪呼吸困難や嚥下困難(物を飲み込むことができない症状)を引き起こしたりすることもあります。
おかしいのは顎の周りだけだし、病院は面倒……と考えず、症状が出始めたら一刻も早く医師に相談するのが良いでしょう。
顎関節症に効果があるのは「エラボトックス注射」
そんな顎関節症に効果があると言われているのは、顎のあたりに注入する「エラボトックス注射」。これは本来咬筋(こうきん)と呼ばれる筋肉を委縮させ、小顔効果を与えるために行われることが多いですが、顎関節症の治療にも使われるということになります。
♦咬筋は「噛むための筋肉」でもある!
エラボトックス注射が顎関節症に効果があると言われる理由は、上記の咬筋が「物を噛むための筋肉」だから。咬筋を委縮させると緊張状態が緩和されるため、顎関節症の開口障害や痛みなども解消されることがあるのです。咬筋がリラックスした状態になって、動かしやすくなるということですね。
えっこれも顎関節症?ボトックス注射で「歯ぎしり」も改善できる
エラボトックス注射で改善が見込める顎関節症は、顎の痛みや開口障害に留まりません。何と特に寝ている間に気になりやすい「歯ぎしり」に関しても、解消できる可能性があるのです。
♦咬筋の過緊張が原因の歯ぎしりなら、改善できる可能性が高い!
そもそも歯ぎしりって何で起こるの?と気になりますが、基本的には極度のストレスや噛み合わせの悪さ、咬筋をはじめとした咀嚼に関係のある筋肉の過緊張などが原因として挙げられます。また、カフェインやアルコールなどを摂取しすぎたことによる睡眠の質低下なども。
咬筋の過緊張による歯ぎしりの場合、ボトックス注射を施したことによりこわばった咬筋が和らぎ、症状が改善される可能性があります。ただし、これはあくまでも改善であり「完治」ではありません。噛み合わせが悪かったり睡眠の質が悪かったり、ストレスが溜まりすぎていたり……といった他の原因が大きい時は、別の医師による治療も受ける必要があるでしょう。
ボトックス注射にはしわ改善や多汗症改善効果も
エラボトックス注射は上記の通り、咬筋の緊張によって起こる顎関節症を改善してくれる可能性があります。また、前述したようにエラを目立たなくさせ、小顔になれるという美容効果も期待できますから、元々エラや顔の大きさも気になっていた……という方は一石二鳥です。
♦ボトックス注射の効果は多岐に渡る!しわ改善や多汗症改善も
エラボトックス注射の場合は小顔効果が代表的ですが、施術を受けられる場所は様々です。額や目元、口元などに打てば気になる表情しわの改善も見込めますし、脚に打てば筋肉の萎縮による美脚効果が期待できます。その他にも多汗症や手汗の症状緩和など、ボトックス注射には多くの効能が存在しますから、顎関節症以外にも気になるところがあれば検討してみてはいかがでしょうか?
所要時間5~10分程度!一般的なボトックス注射の施術の流れは?
ボトックス注射は手術や入院といった大がかりな手間をかけず、数分で施術が受けられることでも評判です。では、一般的なボトックス注射の施術の流れについて見てみましょう。
♦カウンセリング
まず、ほぼどこのクリニックでも行われるのが「カウンセリング」です。なぜボトックス注射をしたいと思ったのか、どういったところが気になるのか、どこに打つかなど、利用者の悩みに合わせて丁寧に話し合ってくれます。この時、施術についての注意やアフターケアなどについても説明されることが多いので、しっかり聞きましょう。
♦デザイン
特に美容系のクリニックで施術を受ける場合は、どのような輪郭にしたいか尋ねられることが多いです。カウンセリングで希望した形が納得いくものかどうかをここで確認し、OKなら施術が行われます。デンタルクリニックの場合、噛む力をチェックされることもあるようです。
♦麻酔・施術
麻酔はとくにせずにそのままで施術する場合もありますが、ボトックス注射で麻酔を行う場合は、クリームタイプであることが多いです。塗っただけで痛くなくなるの?と不思議ですが、これで痛みのほとんどは緩和されるよう。麻酔が効いたら咬筋の辺りにボトックス注射を打つこととなります。麻酔後の所要時間は大体5分~10分程度です。
♦施術後・帰宅
施術が終わったら注射をした部分を冷やし、そのまま帰宅することができます。顔に注射した後だと腫れてないかな……などと不安ですが、施術直後には何の異常も生じません。女性の場合はメイクもできるので、スッピンでは人目が気になるという場合も安心。
頻度はどの程度?ボトックス注射の費用や持続期間
ボトックス注射を打った後ですが、アフターケアはもちろん徹底して行われます。ただし、効果が一生継続するわけではありません。
♦エラボトックス注射の場合、効果は3ヶ月~半年程度
顎関節症の治療や小顔効果を求めて施術を受けるエラボトックス注射の場合、効果の持続期間は大体3ヶ月~長くて半年程度だと言われています。そのため、効果が薄れるごとに定期的にクリニックに通い、ボトックス注射を打ち直す必要性があります。
♦ボトックス注射の費用は数千円~15万円前後まで!
気になる費用ですが、これはクリニックによって数千円~15万円ほどまでかなりの差があります。もちろん1回分の料金です。最安だと初回は1000円弱なんてところも。(2回目以降は数千円~1万円程度になります)
ここまで値段が違う理由は、主に使っている薬剤にあります。ボトックスと一口に言ってもそれぞれメーカーや原価が異なるため、高価な薬剤を使用しているクリニックではその分高額になります。使用している薬剤によって施術時の痛みが違うなんてこともあるようですから、自分がどこを重視するのか考えて慎重に選びたいですね。
妊娠中はNG!ボトックス注射の注意点も知っておこう
また、ボトックス注射には注意点もあります。副作用やリスクについてもしっかり押さえ、全て心得た上で施術に臨みましょう。
♦ボトックス注射の主な注意点
・表情のこわばり、咀嚼のだるさなど副作用の危険性(医師との相談で改善できる可能性あり)
・術後の激しい運動や長湯(高温のお風呂も×)、飲酒などは控える
・男女を問わず、術後は一定期間避妊が必要(胎児や妊婦に与える影響がまだ不確定のため)
・女性の場合、妊娠・授乳中の利用は不可(上記と同じ理由)
・65歳以上の高齢者、未成年は利用不可
・その他指定されている疾患(緑内障、神経筋疾患など)の治療中・薬剤を服用中の人は利用不可
ボトックス注射で顎関節症の悩みを解消しよう
このように、ボトックス注射には注意点もありますが、しっかりと知識を身に付けた上で医師の指示に従い利用すれば、美容だけでなく顎関節症の治療にも効果がある施術なのですね。
顎関節症は放置すると恐ろしい症状でもありますから、痛みや異音、開口障害などに悩まされている方はぜひ一度医師にご相談ください。もしかしたらボトックス注射で、以前のように快適に口の開け閉めをしたり、物を噛んだりできる日々が取り戻せるかもしれません。